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20080704
#40 3月26日
- 2008-07-04 (Fri)
- 小説 神様のロトリー
「ソレデワ、ライシュウミナサンハッピョウデスヨ。ワスレズニヤッテキテクダサイネ」
キーンコーンカーンコーン…キーンコーンカーンコーン…
「Oh…キョウノコウギワコレデfinishデス。ミナサン、See you next week. Have a good weekend.」
英語講師のロバートから出された宿題とは、隣の人と協力して英語の曲を英語で紹介するというものだった。その授業の時、たまたま隣の席にいた人は、まだ一度も会話をしたことのない、よく日焼けした長身の男の子だった。
「……………………………………」
二人の間に、初対面特有の重い沈黙が流れる。
「あ……ねぇ、なんか洋楽のCDとか持ってる?」
その男の子が、二人の間に漂う重い空気を切り裂くように、あたしに話しかけてきた。
「え?…………あ、いや………持ってないなぁ…」
あたしは、いかにもそっけない感じで言葉を返した。
どうせなら、こういう宿題は仲の良い女友達と組みたかった。
宿題という共通の目的のために、一時的に話すようにはなるが、まだお互いが完全な友達という関係になる前にその宿題が終わってしまえば、その後、二人が会話をする必要性は薄まる。その二人が男女なら尚更だ。二人の関係は友達とは言いきれないギクシャクした状態が続き、その後、大学内で顔を合わせるとなぜか気まずい雰囲気になってしまう。
あたしは、そういうのが苦手だ。
「じゃあさ、洋楽じゃあないんだけど、オレ今ちょうど英語で歌ってる歌手のCD一枚持ってるんだけどさ、これにしない?」
「え?」
その男の子は、カバンの中をゴソゴソとあさって、中から一枚のCDを取り出し、あたしに差し出した。
え…えと?…える、どっと、えー、どっと、スカッシュ?……?エルエースカッシュ?ロサンゼルススカッシュ?…なんて読むんだこれ?
あたしはL.A.SQUASHのa bottle of worldsというCDをその男の子から受け取った…が、歌手名がなんと読むのかいまいちよく分からない。それにしても、このCD…ジャケットがかっこよく見せようとしたのか、非常にこっている。うん、確かにジャケットはかっこいい。なんか洋楽の雰囲気を感じる。
「へぇ…これ洋楽じゃないんだ?」
あたしは彼に訊いた。
「うん、それ日本のインディーズのバンドなんだけどさ、オレ結構好きなんだ。聴いてみてよ」
彼は自信満々に微笑みながらそう答えた。
「え?あ、うん……」
あぁ…インディーズかぁ。通りで知らないわけだ。たまに良いのはあるけど、結構はずれが多いんだよね…。ま、別に宿題だからなんでもいいんだけど。
さっきまでしていたこの英語の講義は、パソコン教室で行われているため、今、自分の目の前にはヘッドホン付属のパソコンがある。
あたしはCDをパソコンにセットし、ヘッドホンを頭に掛け、画面上の再生ボタンをクリックした。
♪so I say~ can you listen to her pain voice~♪
お?
♪so I say ~ can you do something to help for her~♪
おお。中々良いかも。
ヘッドホンから流れてきたメロディは、とても澄んだ声をしている女性ボーカルと音楽理論に捕らわれていない特徴のあるテンポが印象的な曲で、聴いていて気持ちが良い唄だった。
♪〜〜〜〜〜♪〜〜〜〜〜〜♪〜〜
うん、なんだか、あたしの理想に近いメロディラインをしてる。これは…良いじゃん。
♪〜〜〜〜〜♪〜〜〜〜〜〜♪〜〜
「どう?」
「えっ?…あ、ごめんごめん」
おおっと、曲に聞き入りすぎて、少し彼の存在を忘れかけていた。
「これいいね!あたし、ちょっと気に入っちゃったかも。じゃあ、発表するのこれにしよっか?……えっと、ごめん、名前はなんて言うんだっけ?」
「え?あぁ、オレの名前?木下直哉━━━━━……………
ピピピピ
ん……?
ピピピピ! ピピピピ!! ピピピピ!!! ピピピピ!!!! ピピピ…ガチャッ!
智美はけたたましく鳴り響く目覚まし時計のスイッチを切ると、カーテンの隙間から差し込む光が顔に当たって目が眩み、思わず目をギュっとつむった。
「う〜ん………夢……………か…」
武道館ライブ当日の朝…智美が見た夢は、直哉と出逢った時の記憶だった。
不思議な夢だった。思い返してみると、一言一句、その時思った気持ちまでがすごいリアルで、もしかしたら記憶より鮮明な夢だったかもしれない。なんだか、タイムスリップして実際にその世界にいたような、そんな感じを起こさせる程リアルな夢だった。
「…………ふふ」
夢ではあったけれど、智美は久し振りに直哉の隣にいたという感覚を感じたことで、懐かしさで心が温かくなり、少し、笑った。
なんだか、今もまだ隣に彼がいるような、変なぬくもりを感じる。
智美は時計に目を向けた。今、9時50分。
えっと…11時にロビー集合だったよね………よしっ!!がんばれ智美!
3月26日 PM5:53 伊豆総合病院・外科病棟318号室
窓の外を見ると、遠くの方に満開の桜の木が一本だけ見えた。
もうあれから…ちょうど明日で一年か…去年はな、直哉のことで頭がいっぱいで、桜なんて全然気にしなかったな……そろそろ時間か…
直哉の父親は、病室にあるCDラジカセのチューニングのつまみを回し、TOMOMIの武道館ライブが放送されるFM局に電波を合わせた。
「ガガッ………で……の後6時からは、全国初!TOMOMI武道館ライブ生放送ですよーー!聞き逃すな!!その前に、一旦CM!………キッコーマンの本だしは…」
「いよいよ、始まりますね」
直哉の母は、そう父に言った。
「あぁ、そうだな。…しっかり聴けよ直哉。お前の彼女の晴れ舞台だぞ」
父はそう言うと、しっかりと武道館ライブのチケットを直哉の手に握らせた。
キーンコーンカーンコーン…キーンコーンカーンコーン…
「Oh…キョウノコウギワコレデfinishデス。ミナサン、See you next week. Have a good weekend.」
英語講師のロバートから出された宿題とは、隣の人と協力して英語の曲を英語で紹介するというものだった。その授業の時、たまたま隣の席にいた人は、まだ一度も会話をしたことのない、よく日焼けした長身の男の子だった。
「……………………………………」
二人の間に、初対面特有の重い沈黙が流れる。
「あ……ねぇ、なんか洋楽のCDとか持ってる?」
その男の子が、二人の間に漂う重い空気を切り裂くように、あたしに話しかけてきた。
「え?…………あ、いや………持ってないなぁ…」
あたしは、いかにもそっけない感じで言葉を返した。
どうせなら、こういう宿題は仲の良い女友達と組みたかった。
宿題という共通の目的のために、一時的に話すようにはなるが、まだお互いが完全な友達という関係になる前にその宿題が終わってしまえば、その後、二人が会話をする必要性は薄まる。その二人が男女なら尚更だ。二人の関係は友達とは言いきれないギクシャクした状態が続き、その後、大学内で顔を合わせるとなぜか気まずい雰囲気になってしまう。
あたしは、そういうのが苦手だ。
「じゃあさ、洋楽じゃあないんだけど、オレ今ちょうど英語で歌ってる歌手のCD一枚持ってるんだけどさ、これにしない?」
「え?」
その男の子は、カバンの中をゴソゴソとあさって、中から一枚のCDを取り出し、あたしに差し出した。
え…えと?…える、どっと、えー、どっと、スカッシュ?……?エルエースカッシュ?ロサンゼルススカッシュ?…なんて読むんだこれ?
あたしはL.A.SQUASHのa bottle of worldsというCDをその男の子から受け取った…が、歌手名がなんと読むのかいまいちよく分からない。それにしても、このCD…ジャケットがかっこよく見せようとしたのか、非常にこっている。うん、確かにジャケットはかっこいい。なんか洋楽の雰囲気を感じる。
「へぇ…これ洋楽じゃないんだ?」
あたしは彼に訊いた。
「うん、それ日本のインディーズのバンドなんだけどさ、オレ結構好きなんだ。聴いてみてよ」
彼は自信満々に微笑みながらそう答えた。
「え?あ、うん……」
あぁ…インディーズかぁ。通りで知らないわけだ。たまに良いのはあるけど、結構はずれが多いんだよね…。ま、別に宿題だからなんでもいいんだけど。
さっきまでしていたこの英語の講義は、パソコン教室で行われているため、今、自分の目の前にはヘッドホン付属のパソコンがある。
あたしはCDをパソコンにセットし、ヘッドホンを頭に掛け、画面上の再生ボタンをクリックした。
♪so I say~ can you listen to her pain voice~♪
お?
♪so I say ~ can you do something to help for her~♪
おお。中々良いかも。
ヘッドホンから流れてきたメロディは、とても澄んだ声をしている女性ボーカルと音楽理論に捕らわれていない特徴のあるテンポが印象的な曲で、聴いていて気持ちが良い唄だった。
♪〜〜〜〜〜♪〜〜〜〜〜〜♪〜〜
うん、なんだか、あたしの理想に近いメロディラインをしてる。これは…良いじゃん。
♪〜〜〜〜〜♪〜〜〜〜〜〜♪〜〜
「どう?」
「えっ?…あ、ごめんごめん」
おおっと、曲に聞き入りすぎて、少し彼の存在を忘れかけていた。
「これいいね!あたし、ちょっと気に入っちゃったかも。じゃあ、発表するのこれにしよっか?……えっと、ごめん、名前はなんて言うんだっけ?」
「え?あぁ、オレの名前?木下直哉━━━━━……………
ピピピピ
ん……?
ピピピピ! ピピピピ!! ピピピピ!!! ピピピピ!!!! ピピピ…ガチャッ!
智美はけたたましく鳴り響く目覚まし時計のスイッチを切ると、カーテンの隙間から差し込む光が顔に当たって目が眩み、思わず目をギュっとつむった。
「う〜ん………夢……………か…」
武道館ライブ当日の朝…智美が見た夢は、直哉と出逢った時の記憶だった。
不思議な夢だった。思い返してみると、一言一句、その時思った気持ちまでがすごいリアルで、もしかしたら記憶より鮮明な夢だったかもしれない。なんだか、タイムスリップして実際にその世界にいたような、そんな感じを起こさせる程リアルな夢だった。
「…………ふふ」
夢ではあったけれど、智美は久し振りに直哉の隣にいたという感覚を感じたことで、懐かしさで心が温かくなり、少し、笑った。
なんだか、今もまだ隣に彼がいるような、変なぬくもりを感じる。
智美は時計に目を向けた。今、9時50分。
えっと…11時にロビー集合だったよね………よしっ!!がんばれ智美!
3月26日 PM5:53 伊豆総合病院・外科病棟318号室
窓の外を見ると、遠くの方に満開の桜の木が一本だけ見えた。
もうあれから…ちょうど明日で一年か…去年はな、直哉のことで頭がいっぱいで、桜なんて全然気にしなかったな……そろそろ時間か…
直哉の父親は、病室にあるCDラジカセのチューニングのつまみを回し、TOMOMIの武道館ライブが放送されるFM局に電波を合わせた。
「ガガッ………で……の後6時からは、全国初!TOMOMI武道館ライブ生放送ですよーー!聞き逃すな!!その前に、一旦CM!………キッコーマンの本だしは…」
「いよいよ、始まりますね」
直哉の母は、そう父に言った。
「あぁ、そうだな。…しっかり聴けよ直哉。お前の彼女の晴れ舞台だぞ」
父はそう言うと、しっかりと武道館ライブのチケットを直哉の手に握らせた。
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