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小説 神様のロトリー Archive
#47 神様のロトリー Another story 〜直哉編〜
- 2008-07-31 (Thu)
- 小説 神様のロトリー
直哉が目覚めてから8ヵ月後――――
2009年11月 東京都北区 国立スポーツ科学センター リハビリテーション室
一人の大柄で色黒な男が、顔中に汗を浮かべながらエアロサイクルをこいでいた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ!」
汗が顎から地面へポツリ、ポツリとたれ落ちる。
「はい、ラスト3km!もう少し!がんばれ!」
トレーナーの力強いゲキが室内に響く。
事故以前、67kgあった彼の体重は、意識が戻ったときには51kgまでに減少していた。
10日間に及ぶ精密検査の結果、幸い体には障害や視力低下、また心配された胃や肝機能の異常などは見られず、外見上では体がやせ細った以外に変化はなかったが、決してそれからの道のりは平坦ではなかった。
彼に課せられた最初のリハビリとは、「背もたれを必要とせず、椅子に座ること」だった。
いや、正確に言えば「背もたれのない椅子に座り続ける」というものだ。
一年もの間、ベッドの上で横になり続けていた彼の体は、まず、体を起こし続けるという事さえも忘れかけていたのだ。
背もたれがある椅子では、背もたれに体を預けていられるため楽に座れるのだが、体を預けることができない背もたれのない椅子では、上半身を自分の力で真っ直ぐに支え続けなければならない。
彼が最初に背もたれのない椅子に座り続けられた時間は、たったの16秒だった。
まず、耳の中にある体の平衡感覚を司る三半規管の機能を回復させるのに、3週間もの時間を要した。
続いては歩行訓練だ。
三半規管の回復により、立ち上がることはすぐにできた彼であったが、それと歩くことはまったくの別なコトだった。
軽いはずの体が重く、すぐに息が切れ、そして、よく躓いた。
なんども膝に大きな痣を作り、自分ひとりで安心して歩行が出来るようになるまで、更に一ヶ月もの時間がかかった。
担当医の許可を得て、ここでようやく退院をすることができた彼だったが、本格的な厳しいリハビリは、ここからが始まりだった。
ソフトテニスをするにあたり、彼が失ったものは非常に多い。
筋力。
持久力。
そして、経験という名の試合勘だ。
ヨネクッスの相川のサポートのもと、復帰に向けて最初に彼に課せられたトレーニングは、ランニングと自分の過去のソフトテニスの試合を収めたDVDを観ることだった。
十分な筋力が戻る前にラケットを振ってしまえば、変な癖が身についてしまう。そのため、まだラケットを振ることは許されなかった。
まず必要なことは、運動するために最低限必要な筋力と持久力をランニングで養い、そして、DVDを観て自分の体が失いかけている自分のプレイスタイルと試合勘を少しでも本格的なテニスの練習が始まる前に思い出さすということだった。
テニスにおいて、試合勘というものはテクニックや筋力と同等以上に大切なモノ。
ましてや彼は前衛の選手。
前衛の主な仕事は、相手の後衛が打つ球をネット際で返すポーチという動作。
試合の中でそのポーチをするかしないかを一瞬で判断するのは、ゲームの流れを読む経験という名の試合勘なのだ。
朝起きてまず5kmのランニング。そして昼食後にDVDを3時間見て、夕方にまた5kmのランニング。
彼は3ヶ月もの間、ひたすらその生活を繰り返した。
彼が目覚めてから5ヵ月後、季節は9月――――
彼は静岡の実家を離れ、東京へ出てきた。
東京都北区にある国立スポーツ科学センターにて、彼は泊り込みで復帰に向けた長期トレーニングを行うことになったのだ。
国立スポーツ科学センターとは、日本のトップアスリートのみが活動を許される日本スポーツ界の医・科学・情報の中枢機関である。彼は、日本ソフトテニス協会が指定する特別強化指定選手として、特別に合宿が許可された。
ヨネクッスや多くの優秀なトレーナーのもと、彼には事故以前の体を取り戻すため、的確で濃いトレーニングメニューが課せられた。
トレーナー達は彼に対し厳しく接した。「自分は元病人だから」だという甘い考えを持たせないためだ。だが、彼自身もともとそんな甘い考えは持ってはおらず、ただ、トレーナーたちの厳しいトレーニングを素直に受け入れた。
厳しいトレーニングの中、彼を復帰に向けて奮い立たせていたのは、智美の存在だった。
自分が深い眠りの中にいる間、智美が一人だけでがんばり続け、そして現在という結果があることが、心の中に自分も頑張らねばという気持ちをいつも強く持たせていた。
トレーニングに励み、徐々に以前のたくましい体格を取り戻し、そしてついに彼にはテニスの練習の再開許可がおりることとなった。
意識を取り戻してからここまで8ヶ月――――――
一日一日が、とても長かった。
「はいラスト1km!!ペースを上げて!」
「はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!はぁあああぁあ!」
エアロサイクルのペダルを踏みこむリズムが、一気に早くなる。
頭からあふれ出る汗が、顎から地面へ滴り落ちる。
「はいラスト300!……200!……100……はい、終了―!タイムは…うん、いいね!もう持久力はだいたい戻ったんじゃないかな」
そう言いながら、トレーナーは彼にタオルを差し出した。
「はぁ、はぁ、はぁ、あ、ありがとうございます…!」
受け取ったタオルで汗を拭いながら、彼はそうお礼を言った。
「ついに明日からテニスの練習だね。どう?ワクワクしてるんじゃない?」
「はぁ、はぁ、はぁ……あの、渡部(トレーナー)さん、一つお願いがあるんですけど…」
「ん?なに?」
「明日のテニスの練習なんですが……その、俺のプレイスタイルを一番知ってる人たちの前で、テニスをしたいんです…
翌日、神奈川県小田原市 PM1:30―――――――――
「次は、終点K大学前―、K大学前―、車内にお忘れ物の無いようにご注意くださいー」
バスの中に車内アナウンスが流れ、彼は大きなラケットバッグを背負い、下車に備えた。
彼が最初の練習場所に選んだのは、母校であるK大学だった。
深い眠りについていた一年間もの間、休学扱いされていた彼の大学の学籍は、彼自身が親に頼み4月に抜いてもらっていた。
しかし、ここを彼の練習再開の場所として選んだことに、反対する人はいるはずがなかった。
もう、これからは何度も来れる場所ではない。そんなことは分かっている。でも、自分を育ててくれたたこの場所から、彼はまたソフトテニスを始めたかった。
「…あれ??」
懐かしく感じる校舎の間を通り抜け、テニスコートの前までやってきた彼だったが、練習しているはずの部員たちが一人もコートにいなかった。
「………???」
おかしいなぁ…昨日部長に連絡したときは、この時間にはもう練習は始まってるって聞いたんだけど…さてはアイツ時間言い間違えたな?どうしよう…?
ドタドタドタドタドタ!
その瞬間、近くの校舎の影から大勢の人が彼に向かって走り寄ってきて、瞬く間に彼は取り囲まれてしまった。見慣れた黄色いユニフォーム姿…ソフトテニス部の部員たちだ。
「せーの、直哉先輩!!おかえりなさーーーい!!!」
パン!パンッ!!パン!パン!!!パン!
彼の頭上へ高く舞い上がったクラッカーの紙吹雪は、ひらひらと舞い落ちて、そして優しく彼の頭の上に降り積もった。
…ふふふ、火薬臭えよバカ………目に沁みて、涙が出てきそうじゃんか。
直哉はクスっと微笑んで、大きな声で言った。
「ただいま!」
2009年11月 東京都北区 国立スポーツ科学センター リハビリテーション室
一人の大柄で色黒な男が、顔中に汗を浮かべながらエアロサイクルをこいでいた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ!」
汗が顎から地面へポツリ、ポツリとたれ落ちる。
「はい、ラスト3km!もう少し!がんばれ!」
トレーナーの力強いゲキが室内に響く。
事故以前、67kgあった彼の体重は、意識が戻ったときには51kgまでに減少していた。
10日間に及ぶ精密検査の結果、幸い体には障害や視力低下、また心配された胃や肝機能の異常などは見られず、外見上では体がやせ細った以外に変化はなかったが、決してそれからの道のりは平坦ではなかった。
彼に課せられた最初のリハビリとは、「背もたれを必要とせず、椅子に座ること」だった。
いや、正確に言えば「背もたれのない椅子に座り続ける」というものだ。
一年もの間、ベッドの上で横になり続けていた彼の体は、まず、体を起こし続けるという事さえも忘れかけていたのだ。
背もたれがある椅子では、背もたれに体を預けていられるため楽に座れるのだが、体を預けることができない背もたれのない椅子では、上半身を自分の力で真っ直ぐに支え続けなければならない。
彼が最初に背もたれのない椅子に座り続けられた時間は、たったの16秒だった。
まず、耳の中にある体の平衡感覚を司る三半規管の機能を回復させるのに、3週間もの時間を要した。
続いては歩行訓練だ。
三半規管の回復により、立ち上がることはすぐにできた彼であったが、それと歩くことはまったくの別なコトだった。
軽いはずの体が重く、すぐに息が切れ、そして、よく躓いた。
なんども膝に大きな痣を作り、自分ひとりで安心して歩行が出来るようになるまで、更に一ヶ月もの時間がかかった。
担当医の許可を得て、ここでようやく退院をすることができた彼だったが、本格的な厳しいリハビリは、ここからが始まりだった。
ソフトテニスをするにあたり、彼が失ったものは非常に多い。
筋力。
持久力。
そして、経験という名の試合勘だ。
ヨネクッスの相川のサポートのもと、復帰に向けて最初に彼に課せられたトレーニングは、ランニングと自分の過去のソフトテニスの試合を収めたDVDを観ることだった。
十分な筋力が戻る前にラケットを振ってしまえば、変な癖が身についてしまう。そのため、まだラケットを振ることは許されなかった。
まず必要なことは、運動するために最低限必要な筋力と持久力をランニングで養い、そして、DVDを観て自分の体が失いかけている自分のプレイスタイルと試合勘を少しでも本格的なテニスの練習が始まる前に思い出さすということだった。
テニスにおいて、試合勘というものはテクニックや筋力と同等以上に大切なモノ。
ましてや彼は前衛の選手。
前衛の主な仕事は、相手の後衛が打つ球をネット際で返すポーチという動作。
試合の中でそのポーチをするかしないかを一瞬で判断するのは、ゲームの流れを読む経験という名の試合勘なのだ。
朝起きてまず5kmのランニング。そして昼食後にDVDを3時間見て、夕方にまた5kmのランニング。
彼は3ヶ月もの間、ひたすらその生活を繰り返した。
彼が目覚めてから5ヵ月後、季節は9月――――
彼は静岡の実家を離れ、東京へ出てきた。
東京都北区にある国立スポーツ科学センターにて、彼は泊り込みで復帰に向けた長期トレーニングを行うことになったのだ。
国立スポーツ科学センターとは、日本のトップアスリートのみが活動を許される日本スポーツ界の医・科学・情報の中枢機関である。彼は、日本ソフトテニス協会が指定する特別強化指定選手として、特別に合宿が許可された。
ヨネクッスや多くの優秀なトレーナーのもと、彼には事故以前の体を取り戻すため、的確で濃いトレーニングメニューが課せられた。
トレーナー達は彼に対し厳しく接した。「自分は元病人だから」だという甘い考えを持たせないためだ。だが、彼自身もともとそんな甘い考えは持ってはおらず、ただ、トレーナーたちの厳しいトレーニングを素直に受け入れた。
厳しいトレーニングの中、彼を復帰に向けて奮い立たせていたのは、智美の存在だった。
自分が深い眠りの中にいる間、智美が一人だけでがんばり続け、そして現在という結果があることが、心の中に自分も頑張らねばという気持ちをいつも強く持たせていた。
トレーニングに励み、徐々に以前のたくましい体格を取り戻し、そしてついに彼にはテニスの練習の再開許可がおりることとなった。
意識を取り戻してからここまで8ヶ月――――――
一日一日が、とても長かった。
「はいラスト1km!!ペースを上げて!」
「はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!はぁあああぁあ!」
エアロサイクルのペダルを踏みこむリズムが、一気に早くなる。
頭からあふれ出る汗が、顎から地面へ滴り落ちる。
「はいラスト300!……200!……100……はい、終了―!タイムは…うん、いいね!もう持久力はだいたい戻ったんじゃないかな」
そう言いながら、トレーナーは彼にタオルを差し出した。
「はぁ、はぁ、はぁ、あ、ありがとうございます…!」
受け取ったタオルで汗を拭いながら、彼はそうお礼を言った。
「ついに明日からテニスの練習だね。どう?ワクワクしてるんじゃない?」
「はぁ、はぁ、はぁ……あの、渡部(トレーナー)さん、一つお願いがあるんですけど…」
「ん?なに?」
「明日のテニスの練習なんですが……その、俺のプレイスタイルを一番知ってる人たちの前で、テニスをしたいんです…
翌日、神奈川県小田原市 PM1:30―――――――――
「次は、終点K大学前―、K大学前―、車内にお忘れ物の無いようにご注意くださいー」
バスの中に車内アナウンスが流れ、彼は大きなラケットバッグを背負い、下車に備えた。
彼が最初の練習場所に選んだのは、母校であるK大学だった。
深い眠りについていた一年間もの間、休学扱いされていた彼の大学の学籍は、彼自身が親に頼み4月に抜いてもらっていた。
しかし、ここを彼の練習再開の場所として選んだことに、反対する人はいるはずがなかった。
もう、これからは何度も来れる場所ではない。そんなことは分かっている。でも、自分を育ててくれたたこの場所から、彼はまたソフトテニスを始めたかった。
「…あれ??」
懐かしく感じる校舎の間を通り抜け、テニスコートの前までやってきた彼だったが、練習しているはずの部員たちが一人もコートにいなかった。
「………???」
おかしいなぁ…昨日部長に連絡したときは、この時間にはもう練習は始まってるって聞いたんだけど…さてはアイツ時間言い間違えたな?どうしよう…?
ドタドタドタドタドタ!
その瞬間、近くの校舎の影から大勢の人が彼に向かって走り寄ってきて、瞬く間に彼は取り囲まれてしまった。見慣れた黄色いユニフォーム姿…ソフトテニス部の部員たちだ。
「せーの、直哉先輩!!おかえりなさーーーい!!!」
パン!パンッ!!パン!パン!!!パン!
彼の頭上へ高く舞い上がったクラッカーの紙吹雪は、ひらひらと舞い落ちて、そして優しく彼の頭の上に降り積もった。
…ふふふ、火薬臭えよバカ………目に沁みて、涙が出てきそうじゃんか。
直哉はクスっと微笑んで、大きな声で言った。
「ただいま!」
#あとがき
- 2008-07-16 (Wed)
- 小説 神様のロトリー
いやー、4ヶ月半にも渡って書いてきました、アルマークの初小説「神様のロトリー」ついに終わりです。
総文字数なんと114500字…どうなんでしょ?小説一冊分くらいはあるんですかね?
こんなダメダメ小説を読んでいたたいた上、今このあとがきを書いてる時点での総拍手数44と、コメントをしていただいた方々、本当にありがとうございました!
なかったらたぶん、最後まで続けてられなかったです…。
それでは、すごい眠くてなんだか上手く文が書けないですけど、せっかくなんでこの物語について少し書きます。
まあ、大まかなあらすじだけを考えて書き始めたワケなんですが…、#3話辺りを書いてるときに、一つ大事なことに気がつきました。
この物語ででてくるソフトテニスと音楽という分野なんですが…
文章で表現できないのでは??
と思ったんですよ。
まずは、ソフトテニスについて。
これはいくら考えても、実際に試合をしている場面などは書けないと思い、途中で書こうか悩んだんですが、結局、飛ばしてしまいました。
無理です。あまりにも視覚に頼りすぎるスポーツなので。専門用語も多いし、ソフトテニス経験者でなきゃ読んだとしても理解できないと判断しました。
まぁ、本当の小説家なら誰でも理解できるように書けるかもしれないですが。
次は音楽。
音楽で一番大切なのは聴覚なので、やっぱり文章での表現は難しいのではと思いました。実際の音は文章で表すのは不可能なので。それで、せめて臨場感だけでもと、武道館ライブの時に試しに書いてみました。上手く書けたのかどうか…自分じゃ分からないんですよね…。
あとは…うーん、ほんと見苦しい文章でごめんなさい!てなことだけです。
日本語って難しいですよね…
ああ、そうそう。これは小説を書いたり読んだりしてる時に思ったんですが、本当に良い文章というのは、「平凡な言葉でありながら、でもすばらしい言葉」というものだと思うんです。なので、決して難しい表現や漢字を使えるからといってそれがすばらしい文章ではないんだと思います。まぁ、これはあくまで個人的な考えであって、本当は各々の自由だと思いますけど。。
さて…このブログどうしよう(笑)
とりあえずブログ名は変えないと。
とりあえず、今月はこれ以上小説は書かないと思います。他にしなければならないことがあるので。
最後に、この小説を読んでいただいた方々、本当にありがとうございました!
ちょっとだけでもいいんで、感想をいただけたら幸いです。
7月15日 18:15追記
そうだ、もう一つ。
L.A.SQUASHという名を勝手に使用してしまい、申し訳ありませんでした。
まぁ、メンバーの方が見ていらっしゃるとは思えませんが、一応書いておきます。
お詫びといってはなんですが、ちょっとだけ宣伝させていただきますよ。
彼らを知ってる方もいるかもしれませんが、物語に数回登場してきたL.A.SQUASHという歌手なんですが、実際に京都を中心に活動していらっしゃるインディーズ・バンドです。確かCDも2〜3枚リリースしていたような。
ジャンルはパンク・エモ・ロックかな?かっこいいですよ。女性ボーカルの声がすごい綺麗です。全部英語歌詞ですけどね。
アルマークはELLEGARDENの次は彼らが来るんじゃないのかと思っているんですが、知名度が低いのか、やはり全部英語なのがいけないのか、いまいち未だにパッとしてません。
好みが分かれる曲調だと思いますが、ニコニコ動画で見つけたんで良かったら聴いて下さい。
どうでしょう?ちなみに、これはMADと呼ばれるもので、ペルソナ3のOPを実際に歌っているワケではありません。これはどなたかが勝手に造った動画です。
他の曲もお聴きになりたかったら、http://www.myspace.com/lasquash でも2曲だけ試聴できます。
改めて、彼らの名を勝手に使用してしまい、申し訳ありませんでした。
ではでは。
総文字数なんと114500字…どうなんでしょ?小説一冊分くらいはあるんですかね?
こんなダメダメ小説を読んでいたたいた上、今このあとがきを書いてる時点での総拍手数44と、コメントをしていただいた方々、本当にありがとうございました!
なかったらたぶん、最後まで続けてられなかったです…。
それでは、すごい眠くてなんだか上手く文が書けないですけど、せっかくなんでこの物語について少し書きます。
まあ、大まかなあらすじだけを考えて書き始めたワケなんですが…、#3話辺りを書いてるときに、一つ大事なことに気がつきました。
この物語ででてくるソフトテニスと音楽という分野なんですが…
文章で表現できないのでは??
と思ったんですよ。
まずは、ソフトテニスについて。
これはいくら考えても、実際に試合をしている場面などは書けないと思い、途中で書こうか悩んだんですが、結局、飛ばしてしまいました。
無理です。あまりにも視覚に頼りすぎるスポーツなので。専門用語も多いし、ソフトテニス経験者でなきゃ読んだとしても理解できないと判断しました。
まぁ、本当の小説家なら誰でも理解できるように書けるかもしれないですが。
次は音楽。
音楽で一番大切なのは聴覚なので、やっぱり文章での表現は難しいのではと思いました。実際の音は文章で表すのは不可能なので。それで、せめて臨場感だけでもと、武道館ライブの時に試しに書いてみました。上手く書けたのかどうか…自分じゃ分からないんですよね…。
あとは…うーん、ほんと見苦しい文章でごめんなさい!てなことだけです。
日本語って難しいですよね…
ああ、そうそう。これは小説を書いたり読んだりしてる時に思ったんですが、本当に良い文章というのは、「平凡な言葉でありながら、でもすばらしい言葉」というものだと思うんです。なので、決して難しい表現や漢字を使えるからといってそれがすばらしい文章ではないんだと思います。まぁ、これはあくまで個人的な考えであって、本当は各々の自由だと思いますけど。。
さて…このブログどうしよう(笑)
とりあえずブログ名は変えないと。
とりあえず、今月はこれ以上小説は書かないと思います。他にしなければならないことがあるので。
最後に、この小説を読んでいただいた方々、本当にありがとうございました!
ちょっとだけでもいいんで、感想をいただけたら幸いです。
7月15日 18:15追記
そうだ、もう一つ。
L.A.SQUASHという名を勝手に使用してしまい、申し訳ありませんでした。
まぁ、メンバーの方が見ていらっしゃるとは思えませんが、一応書いておきます。
お詫びといってはなんですが、ちょっとだけ宣伝させていただきますよ。
彼らを知ってる方もいるかもしれませんが、物語に数回登場してきたL.A.SQUASHという歌手なんですが、実際に京都を中心に活動していらっしゃるインディーズ・バンドです。確かCDも2〜3枚リリースしていたような。
ジャンルはパンク・エモ・ロックかな?かっこいいですよ。女性ボーカルの声がすごい綺麗です。全部英語歌詞ですけどね。
アルマークはELLEGARDENの次は彼らが来るんじゃないのかと思っているんですが、知名度が低いのか、やはり全部英語なのがいけないのか、いまいち未だにパッとしてません。
好みが分かれる曲調だと思いますが、ニコニコ動画で見つけたんで良かったら聴いて下さい。
どうでしょう?ちなみに、これはMADと呼ばれるもので、ペルソナ3のOPを実際に歌っているワケではありません。これはどなたかが勝手に造った動画です。
他の曲もお聴きになりたかったら、http://www.myspace.com/lasquash でも2曲だけ試聴できます。
改めて、彼らの名を勝手に使用してしまい、申し訳ありませんでした。
ではでは。
#46 一枚の大きな桜の花びら
- 2008-07-16 (Wed)
- 小説 神様のロトリー
TOMOMI JAPAN TOUR 初日 武道館公演終了後 舞台裏廊下―――
「ありがとうございました!」
「うん、お疲れ様!がんばったね!」
智美はライブ成功の感謝の気持ちを伝えるため、廊下を周りながらライブの関係者一人一人と握手をしていた。
あの事故があってから、いつもあたしの心の中には、罪悪感という名の悪魔が住んでいて、度々あたしを苦しめてきた。でも、その悪魔はもう、あたしの中にはいない。
「…うふふ」
あぁ、笑顔が止まらない。顔がにやけてにやけて、どうしようもない。
「そんじゃあ!皆さん打ち上げは10時に裏口前に集合です!!遅れないようにお願いしまーす!!」
スタッフの大きな声が廊下に響き渡った。
「さ、早く智美ちゃんも着替えてきて」
「は〜〜〜い! ルン♪ルン♭ルン♯」
鼻歌を歌いながら智美は控え室へと戻った。
着替えをして、あらかた帰り支度を終えると、智美は携帯電話の電源を入れた。
新着メールの問い合わせをすると、友達や家族から多くのお祝いメールが届いていた。
だが、その内容は「かっこよかった!」とか「夢叶ったね!おめでとう!」というもので、直哉については誰も書いてはいなかった。
あ……そうか…まだみんな知らないんだ。う〜ん、でもたぶん、これからみんなに連絡が段々回って、みんな直哉に会いに行くんだろうなぁ………いいなぁ、あたしも行きたいな…いつ会えるかなぁ…しばらくは無理かな…早く会いたい…
「……あ、もう時間だ…」
時計を見ると、もう集合時間になろうとしていたため、急いで智美は荷物を持って集合場所である裏口前へと向かった。
「………あら?」
集合場所に着いた智美だったが、そこには誰もいなかった。
あれれ?なんで?もうみんな行っちゃったのぉ!?うそ〜〜〜〜。
「清田さん」
「はい?あ、石川さん!」
辺りをキョロキョロと探していると、後ろから石川が話しかけてきた。
「みんなどこ行ったんですか?もしかして、もうみんな打ち上げに行っちゃったんですか!?」
慌てて智美は石川に尋ねた。
「うん、そうだよ」
石川は淡々とそう答えた。
「おおお!?本当に?ちょっ、なんであたしを置いていくんですか!?ヒドイですよ!」
石川の答えに驚き、智美はすかさず問い返した。
「…ちょうど一年前の今日って…なんの日だったか覚えてるかな?」
「……え?」
な、なんだ?一年前の今日…?今日は3月26日…去年の3月26日……?…あ、そうか…。
「…スカウトされて…、あたしがスタジオで唄った日…ですよね?」
「うん、正解!そんなワケで、はい!これデビュー決定一周年記念プレゼント!」
そう言うと、石川は智美に一枚の紙を手渡した。
「え?え?」
よく見ると、それは新幹線の切符で、
[22時47分発 こだま709号 東京→三島]
と書かれていた。
「…石川さん?…これって…?」
「ん?さっき言ったでしょ?デビュー決定一周年記念プレゼント。さぁ、今は何時でしょう?」
「…10時ちょうど…です…」
「うん。今から行けばちょうどいい位だよね。んじゃあ行ってらっしゃい!……あ、一応言っとくけど、明日はホテルのロビーに昼の1時に集合だからね。忘れないでね」
「…あの…さっきの…打ち上げは10時集合っていうのは……?」
「あぁ、あれ?もちろん清田さんをハメるためのみんなの嘘!ははっ!誰もいなくてびっくりした?……今、清田さんは打ち上げなんかより、行かなきゃいけないトコあるでしょ?さあ、行っておいで」
………グヒんッ!
もう…泣かせないでよ、みんなのアホ。
智美は石川に対し、深く頭を下げた。
「ホントに、ありがとうございます!それじゃ、行って来ます!!」
翌日、3月27日 PM1:00 伊豆総合病院 外科病棟3階――――――
私の名前は田中美里。伊豆総合病院・外科病棟に勤務する看護士だ。
昨夜、一年もの間意識を失っていた木下直哉さんという患者が目を覚ました。
私はかれこれ8年も看護士をしているけれど、こんな奇跡を呼べる出来事に遭ったのは初めてだった。
彼の担当だった牧野先生は、「私のおかげだ!私の治療方法が効いたんだ!私は名医だ!」だなんて調子に乗っていたけれど、私はそうは思わない。
彼が助かったのは、彼が多くの大切な友達を持っていたから。
毎日毎日、交代で見舞いに訪れていた彼らの強い気持ちが、きっと彼に届き、そして目を覚ましたのだと思う。
時に、「気持ちは薬よりも強し」ってね。
「ワイワイガヤガヤ!ワイワイガヤガヤ!!」
今日、彼のもとには絶え間なく見舞い客が訪れていて、部屋からは大きな声が頻繁に聞こえてくる。
正直、他の患者さんに迷惑がかかりそうな程うるさいから、注意しなければならないけど、私だって空気は読める。
今日だけは、見逃してあげることにしよう。
3月27日 PM1:06 東京都千代田区 ホイットモアホテル正面玄関前
私の名前は清田智美。エイヘックスレコードに所属するシンガーソングライターです。
一応、本名は非公開で、TVの中ではTOMOMIと名乗ってます。
昨日から、私は初めての全国ツアーが始まりました。
その最中、私の大切な人が目を覚ましました。
あまりにも嬉しくて、アンコールの最後の曲を唄っている最中、私は泣き出してしまい、唄えなくなってしまいました。
そんな唄えない私に代わって、観客たちが唄ってくれたあの光景は、きっといつまでも忘れないでしょう。
でも、その後病院へ彼を訪ねた際、「まだプロ根性が足りない」と私は彼に言われてしまいました。
あはは、まぁ、しょうがないですよね。何しろ私はまだCDデビューから8ヶ月なんですから。
一年前はあれ程たくましかった彼の体は、ウソのように痩せ細り、彼自身、その事には苦笑いをしていました。ふくらはぎとか二の腕とか、肉がプルプルしていて、とてもまだまだ運動ができる体ではなかったけれど、彼は私にこう言いました。
「俺はソフトテニスの選手だ」
私は信じています。きっと、彼なら大丈夫。
思えば、今日があの事故からちょうど一年というのも、不思議なめぐり合わせという気がします。
あの事故は、私たちから大きなものを奪っていったけれど、代わりに多くの大切なモノを与えてくれた。
だから、決してもう、私はあの頃に戻りたいだなんて思いません。
私たちは、幸せです。
私は、これからバスに乗って次の公演地、仙台へ向かいますー
ひらひらと、大きな桜の花びらが一枚、智美の横を通り過ぎていった。
終
「ありがとうございました!」
「うん、お疲れ様!がんばったね!」
智美はライブ成功の感謝の気持ちを伝えるため、廊下を周りながらライブの関係者一人一人と握手をしていた。
あの事故があってから、いつもあたしの心の中には、罪悪感という名の悪魔が住んでいて、度々あたしを苦しめてきた。でも、その悪魔はもう、あたしの中にはいない。
「…うふふ」
あぁ、笑顔が止まらない。顔がにやけてにやけて、どうしようもない。
「そんじゃあ!皆さん打ち上げは10時に裏口前に集合です!!遅れないようにお願いしまーす!!」
スタッフの大きな声が廊下に響き渡った。
「さ、早く智美ちゃんも着替えてきて」
「は〜〜〜い! ルン♪ルン♭ルン♯」
鼻歌を歌いながら智美は控え室へと戻った。
着替えをして、あらかた帰り支度を終えると、智美は携帯電話の電源を入れた。
新着メールの問い合わせをすると、友達や家族から多くのお祝いメールが届いていた。
だが、その内容は「かっこよかった!」とか「夢叶ったね!おめでとう!」というもので、直哉については誰も書いてはいなかった。
あ……そうか…まだみんな知らないんだ。う〜ん、でもたぶん、これからみんなに連絡が段々回って、みんな直哉に会いに行くんだろうなぁ………いいなぁ、あたしも行きたいな…いつ会えるかなぁ…しばらくは無理かな…早く会いたい…
「……あ、もう時間だ…」
時計を見ると、もう集合時間になろうとしていたため、急いで智美は荷物を持って集合場所である裏口前へと向かった。
「………あら?」
集合場所に着いた智美だったが、そこには誰もいなかった。
あれれ?なんで?もうみんな行っちゃったのぉ!?うそ〜〜〜〜。
「清田さん」
「はい?あ、石川さん!」
辺りをキョロキョロと探していると、後ろから石川が話しかけてきた。
「みんなどこ行ったんですか?もしかして、もうみんな打ち上げに行っちゃったんですか!?」
慌てて智美は石川に尋ねた。
「うん、そうだよ」
石川は淡々とそう答えた。
「おおお!?本当に?ちょっ、なんであたしを置いていくんですか!?ヒドイですよ!」
石川の答えに驚き、智美はすかさず問い返した。
「…ちょうど一年前の今日って…なんの日だったか覚えてるかな?」
「……え?」
な、なんだ?一年前の今日…?今日は3月26日…去年の3月26日……?…あ、そうか…。
「…スカウトされて…、あたしがスタジオで唄った日…ですよね?」
「うん、正解!そんなワケで、はい!これデビュー決定一周年記念プレゼント!」
そう言うと、石川は智美に一枚の紙を手渡した。
「え?え?」
よく見ると、それは新幹線の切符で、
[22時47分発 こだま709号 東京→三島]
と書かれていた。
「…石川さん?…これって…?」
「ん?さっき言ったでしょ?デビュー決定一周年記念プレゼント。さぁ、今は何時でしょう?」
「…10時ちょうど…です…」
「うん。今から行けばちょうどいい位だよね。んじゃあ行ってらっしゃい!……あ、一応言っとくけど、明日はホテルのロビーに昼の1時に集合だからね。忘れないでね」
「…あの…さっきの…打ち上げは10時集合っていうのは……?」
「あぁ、あれ?もちろん清田さんをハメるためのみんなの嘘!ははっ!誰もいなくてびっくりした?……今、清田さんは打ち上げなんかより、行かなきゃいけないトコあるでしょ?さあ、行っておいで」
………グヒんッ!
もう…泣かせないでよ、みんなのアホ。
智美は石川に対し、深く頭を下げた。
「ホントに、ありがとうございます!それじゃ、行って来ます!!」
翌日、3月27日 PM1:00 伊豆総合病院 外科病棟3階――――――
私の名前は田中美里。伊豆総合病院・外科病棟に勤務する看護士だ。
昨夜、一年もの間意識を失っていた木下直哉さんという患者が目を覚ました。
私はかれこれ8年も看護士をしているけれど、こんな奇跡を呼べる出来事に遭ったのは初めてだった。
彼の担当だった牧野先生は、「私のおかげだ!私の治療方法が効いたんだ!私は名医だ!」だなんて調子に乗っていたけれど、私はそうは思わない。
彼が助かったのは、彼が多くの大切な友達を持っていたから。
毎日毎日、交代で見舞いに訪れていた彼らの強い気持ちが、きっと彼に届き、そして目を覚ましたのだと思う。
時に、「気持ちは薬よりも強し」ってね。
「ワイワイガヤガヤ!ワイワイガヤガヤ!!」
今日、彼のもとには絶え間なく見舞い客が訪れていて、部屋からは大きな声が頻繁に聞こえてくる。
正直、他の患者さんに迷惑がかかりそうな程うるさいから、注意しなければならないけど、私だって空気は読める。
今日だけは、見逃してあげることにしよう。
3月27日 PM1:06 東京都千代田区 ホイットモアホテル正面玄関前
私の名前は清田智美。エイヘックスレコードに所属するシンガーソングライターです。
一応、本名は非公開で、TVの中ではTOMOMIと名乗ってます。
昨日から、私は初めての全国ツアーが始まりました。
その最中、私の大切な人が目を覚ましました。
あまりにも嬉しくて、アンコールの最後の曲を唄っている最中、私は泣き出してしまい、唄えなくなってしまいました。
そんな唄えない私に代わって、観客たちが唄ってくれたあの光景は、きっといつまでも忘れないでしょう。
でも、その後病院へ彼を訪ねた際、「まだプロ根性が足りない」と私は彼に言われてしまいました。
あはは、まぁ、しょうがないですよね。何しろ私はまだCDデビューから8ヶ月なんですから。
一年前はあれ程たくましかった彼の体は、ウソのように痩せ細り、彼自身、その事には苦笑いをしていました。ふくらはぎとか二の腕とか、肉がプルプルしていて、とてもまだまだ運動ができる体ではなかったけれど、彼は私にこう言いました。
「俺はソフトテニスの選手だ」
私は信じています。きっと、彼なら大丈夫。
思えば、今日があの事故からちょうど一年というのも、不思議なめぐり合わせという気がします。
あの事故は、私たちから大きなものを奪っていったけれど、代わりに多くの大切なモノを与えてくれた。
だから、決してもう、私はあの頃に戻りたいだなんて思いません。
私たちは、幸せです。
私は、これからバスに乗って次の公演地、仙台へ向かいますー
ひらひらと、大きな桜の花びらが一枚、智美の横を通り過ぎていった。
終
#45 アンコール
- 2008-07-15 (Tue)
- 小説 神様のロトリー
振り返ると、石川さんがあたしに駆け寄ってくる姿が見えた。
「はぁ、はぁ、はぁ……はい!清田さんコレ!!」
息を切らしながら駆け寄ってきた石川は、智美に一台の携帯電話を差し出した。
え?…?どういう事?それより今は…
「いや、あの石川さん、あたしステージに戻らないと…!」
智美はそう言うと、差し出された携帯電話を石川に返そうとした。
だが、石川はその携帯電話を受け取らず、微笑みながら智美にこう言った。
「TOMOMIのアンコールを求めてる声は、あれですべてじゃないよ」
「………………………………え?」
智美は携帯電話を見つめる。
ドクンッ ドクンッ ドクンッ
……………この電話の向こう側にいる人は…誰…?なんでだろう、なんでこんなにドキドキするんだろう。
そう思いながら、智美はゆっくりと携帯電話を耳元に近づけた。
「……………………もしもし?」
「「…ア゛ンゴール……ア゛ンゴール……ア゛ンゴール…」」
「!!」
電話の向こう側にいた人は、すごい声がかすれていたけれど、その声の持ち主が誰なのか、智美が分からないはずがなかった。
「……直哉?…直哉でしょ!?…直哉なんだよね!??」
「「へへ…智美、びさじぶり…なの゛…がな?あんまぞんな気じないげど…」」
あぁ………この声…!…直哉……!!
あまりの突然の出来事に、智美の胸の中には熱い気持ちがどっと溢れ出し、その場に崩れ落ちるように座り込んでしまった。
「直哉ぁ……!」
座り込んだまま、体から搾り出すように智美は彼の名を叫んだ。
「「へへ…智美、ヂゲッド、ありがどね…」」
チケット………?なんで今そんな事……
「……だって、約束したじゃん…」
今にも泣き出しそうなか細い声で、智美はそう言った。
「「ぞだね…。ねぇ智美。ごれで、武道館の観客全員のア゛ンゴールが智美に゛届いだわけだげど……さぁ、TOMOMIどうずる…?」」
「……え?」
「「み゛んな、TOMOMIの歌声をもっど聴ぎだいんだよ゛…」」
「………うん」
「「…がんばれ!TOMOMI!…ゴホッゴホッ」
ああぁ…そうか…直哉…まだ声が…
「…うん、がんばる!…直哉、ありがとう」
「「どういだ…」」 プツッ!
直哉はまだ、あたしに何かを言いたそうだったけれど、無情にもあたしは電話を切った。
十分すぎるほど、もう彼の気持ちはあたしに伝わった。
「アンコール!!アンコール!!アンコール!!アンコール!!!」
暗闇に包まれた館内では、絶え間なくTOMOMIの再登場を求める観客たちの大きな声が響き渡っている。
…うん、こんなとこで座ってる場合じゃない!
TOMOMIは彼らの声に応えるため、力強く立ち上がり、涙腺に溜まり始めていた涙を強引に体の中へと押し戻した。
そして、ステージに向かって大きく一歩を踏み出した。
「それではスタンバイいいですかー!!?」
スタッフの大きな声が舞台裏に響き渡った。
「お願いしまーす!!」
あたしは、もっと大きな声でスタッフに返事をした。
ピカッ!!
「ワァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
再度、武道館のステージが照明に明るく照らし出されると、観客たちは待っていましたとばかりに大きな歓声をあげた。
再び、熱気を帯び始めた館内。観客たちは歓声をあげて主役の登場を待ちわびる。
「ス〜〜〜〜〜…フゥーーーー……へへっ」
スタンバイ位置に着いたTOMOMIは目をつむって、一度大きく深呼吸をし、そしてそっと笑った。
あたしの一番大切な人が、深い眠りから覚めた。
あたしの一番大切な人が、ラジオであたしの曲を聴いてくれていた。
あたしの一番大切な人が、あたしにアンコールをした。
あたしの一番大切な人は、今、この武道館にはいないけれど、できればあたしの生の歌声を聴いて欲しかったけれど、でも、あたしは本当に嬉しい。
あたしの一番大切な人は、起きたんだ。
「…よしっ!」
TOMOMIは光り輝くステージの中へ、満面の笑顔をしながら走り出した。
「はぁ、はぁ、はぁ……はい!清田さんコレ!!」
息を切らしながら駆け寄ってきた石川は、智美に一台の携帯電話を差し出した。
え?…?どういう事?それより今は…
「いや、あの石川さん、あたしステージに戻らないと…!」
智美はそう言うと、差し出された携帯電話を石川に返そうとした。
だが、石川はその携帯電話を受け取らず、微笑みながら智美にこう言った。
「TOMOMIのアンコールを求めてる声は、あれですべてじゃないよ」
「………………………………え?」
智美は携帯電話を見つめる。
ドクンッ ドクンッ ドクンッ
……………この電話の向こう側にいる人は…誰…?なんでだろう、なんでこんなにドキドキするんだろう。
そう思いながら、智美はゆっくりと携帯電話を耳元に近づけた。
「……………………もしもし?」
「「…ア゛ンゴール……ア゛ンゴール……ア゛ンゴール…」」
「!!」
電話の向こう側にいた人は、すごい声がかすれていたけれど、その声の持ち主が誰なのか、智美が分からないはずがなかった。
「……直哉?…直哉でしょ!?…直哉なんだよね!??」
「「へへ…智美、びさじぶり…なの゛…がな?あんまぞんな気じないげど…」」
あぁ………この声…!…直哉……!!
あまりの突然の出来事に、智美の胸の中には熱い気持ちがどっと溢れ出し、その場に崩れ落ちるように座り込んでしまった。
「直哉ぁ……!」
座り込んだまま、体から搾り出すように智美は彼の名を叫んだ。
「「へへ…智美、ヂゲッド、ありがどね…」」
チケット………?なんで今そんな事……
「……だって、約束したじゃん…」
今にも泣き出しそうなか細い声で、智美はそう言った。
「「ぞだね…。ねぇ智美。ごれで、武道館の観客全員のア゛ンゴールが智美に゛届いだわけだげど……さぁ、TOMOMIどうずる…?」」
「……え?」
「「み゛んな、TOMOMIの歌声をもっど聴ぎだいんだよ゛…」」
「………うん」
「「…がんばれ!TOMOMI!…ゴホッゴホッ」
ああぁ…そうか…直哉…まだ声が…
「…うん、がんばる!…直哉、ありがとう」
「「どういだ…」」 プツッ!
直哉はまだ、あたしに何かを言いたそうだったけれど、無情にもあたしは電話を切った。
十分すぎるほど、もう彼の気持ちはあたしに伝わった。
「アンコール!!アンコール!!アンコール!!アンコール!!!」
暗闇に包まれた館内では、絶え間なくTOMOMIの再登場を求める観客たちの大きな声が響き渡っている。
…うん、こんなとこで座ってる場合じゃない!
TOMOMIは彼らの声に応えるため、力強く立ち上がり、涙腺に溜まり始めていた涙を強引に体の中へと押し戻した。
そして、ステージに向かって大きく一歩を踏み出した。
「それではスタンバイいいですかー!!?」
スタッフの大きな声が舞台裏に響き渡った。
「お願いしまーす!!」
あたしは、もっと大きな声でスタッフに返事をした。
ピカッ!!
「ワァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
再度、武道館のステージが照明に明るく照らし出されると、観客たちは待っていましたとばかりに大きな歓声をあげた。
再び、熱気を帯び始めた館内。観客たちは歓声をあげて主役の登場を待ちわびる。
「ス〜〜〜〜〜…フゥーーーー……へへっ」
スタンバイ位置に着いたTOMOMIは目をつむって、一度大きく深呼吸をし、そしてそっと笑った。
あたしの一番大切な人が、深い眠りから覚めた。
あたしの一番大切な人が、ラジオであたしの曲を聴いてくれていた。
あたしの一番大切な人が、あたしにアンコールをした。
あたしの一番大切な人は、今、この武道館にはいないけれど、できればあたしの生の歌声を聴いて欲しかったけれど、でも、あたしは本当に嬉しい。
あたしの一番大切な人は、起きたんだ。
「…よしっ!」
TOMOMIは光り輝くステージの中へ、満面の笑顔をしながら走り出した。
#44 スタンディングオーベーション
- 2008-07-12 (Sat)
- 小説 神様のロトリー
唄っている最中、おでこを伝ってしたたり落ちてきた汗が、目に入ってしみた。
でも、あたしはギターを弾きながら唄っている最中で、目に入った汗を拭うことができなかった。
気付くと、あたしは汗まみれになっていた。
Tシャツの首周りに、汗で大きな染みができていた。
もし、これが体育の授業とかだったら、「あ〜あの人汗っかきだー」とか思われるけど、ここだとなぜか全然恥ずかしくない。
むしろ、「見ろ」みたいな。
そして、「お前らも一緒に汗を掻け」みたいな。
正直言って、あたしはここに来てくれている人たちのことを、知らない。
名前も、どこに住んでいるのかということも、知らない。
みんなが、それぞれに本来の職場やら学校やらを持っている。
顔と顔を合わせて話したことなど、ほとんどが無い人たちばかりだ。
社会的枠組みで言えば、私たちは他人同士。
でも、今ここではそうは思わない。
みんなが一つの音楽のもとに、一つになっている。
今だけ、私たちは他人同士じゃない。
他人じゃないから、私たちは楽しむことができるんだ。
ファーストシングルをリリースしてからわずか8ヶ月、このわずかな時間で武道館ライブを実現させたという事実が、TOMOMIの実力を物語っていた。
アップテンポな曲でも、バラードな曲でも高いクオリティを魅せ、人々の心を惹き付けるTOMOMIの音楽は、それまでの様々な経験が育んだもの。
智美は宮崎県の海岸沿いの街に生まれ、高校時代までをそこで過ごした。
部屋の窓を開ければ海の匂いが香るほど、家は海から近かった。
智美にとって、海とは音楽の母である。
「同じ波は二度と来ない」とよくサーファーが言うけれど、智美は誰に教わったワケでもなく、小学校低学年の時にはそれをすでに知っていた。
短い波でも大きな波でも、どんな波でも音程とテンポは微妙に異なっていることを智美は身をもって知っていたのだ。
そして、人を癒す力を持った波の音を幼少時代から何万回、何十万回、何百万回と聴いてきたことが、今の智美の音楽の柱となっている。
高校時代にギターを手に入れてから、智美は自然と曲を作り始めた。どんどんと音楽が好きになるにつれ、音楽性は幅を広げ、次第にシンガーソングライターになるという夢を持つようになった。
大学は迷うことなく海に近い大学を選んだ。海から離れて暮らすことは息苦しさを感じそうで、絶対にできなかった。
大学に入ると、当初、智美は軽音部への入部を考えた。
だが、そこで智美はとまどいを感じた。
誰もが、有名な歌手の曲のコピーをすることだけで活動をしていたのだ。
彼らの多くは本気で音楽をしようと考えているわけではなく、ただ、大学時代を音楽で楽しむことだけを考えているように、智美の目には映った。
真面目に音楽をしたいと考えていた智美は、彼らとの間にモチベーションのギャップを感じたのだ。
もちろん、自分で曲を作る者も若干いたが、それは到底音楽と呼べるシロモノではなく、智美は「ここでは自分は成長できない」と悟った。
軽音部への入部を諦めた智美は、次に吹奏楽部を選んだ。
正解だった。
吹奏楽が奏でる壮大なサウンドは、智美が持つ音楽性に大きな刺激を与え、それまで持っていた音楽性と混じり合うことで、大きな成長を遂げた。
ただ、いい曲が描けるようになったとしても、まだ智美には満足できないことがあった。
詩である。
自分で作った曲に載せた自分の詩は、自分が無理やり心からひねり出した詩に過ぎず、本当に伝えたいことを書いているとは思えなかったのである。
そんな詩の世界観を変えたのは、あの悲しい事故だった。
智美は悩みに悩みぬくことで、様々なことを知った。
本当の自分の姿、普段感じていた心の不安、愛と呼ばれるもの、苦しみ、強がり、前向きになることの大切さ、人間が本来持つ本当の心の叫び等、様々な新しい感情が、智美の詩の世界観を塗り替えたのだ。
そして今、その様々な経験の集大成と呼べるTOMOMIの武道館ライブは、肩書き的には終演の時を迎えようとしていた。
最後の曲が終わると、観客たちはスタンディングオーベーションを行い、TOMOMIが奏でた音楽に対して多大な評価を下したことをステージ上にいる人々に伝えた。
「ありがとー!本当にありがとーございました〜〜〜!!!ばいば〜〜〜〜い!!」
笑顔で大きく手を振りながら、TOMOMIは舞台裏へと駆け足で消えていった。
バックバンドのメンバーも引き揚げて、ステージ上には誰もいなくなると、それまで館内を色鮮やかに照らしていた無数の照明がゆっくりとライトダウンされ、再び館内は開演時と似たような暗闇に包まれた。
だが、これはあくまで次に起こることを予想しての演出だ。
パチパチパチパチパチパチ!
暗闇に包まれても、館内のスタンディングオーベーションは鳴り止まず、熱気を帯びた雰囲気は収まらない。
そして、次第に17000人の手拍子が一つのリズムを刻みだし、館内に大きな声で一つの言葉が繰り返し響きはじめた。
「…アンコール!アンコール!アンコール!!アンコール!!アンコール!!アンコール!!!」
始めから予期していた事とはいえ、舞台裏でTOMOMIは観客からのその声に感動し、鳥肌がたった。
あまりの嬉しさに思わず涙が溢れそうになったが、まだ泣くのは早いとグッとこらえた。
「…よしっ!みんなまた大集合!」
TOMOMIは再びバックバンドのメンバーを集め、ぐっしょりと濡れたTシャツのままお互いの肩に手を回し、円陣を組んだ。
「アンコール!!アンコール!!アンコール!!アンコール!!!」
観客の呼ぶ声が、どんどんと大きくなっていく。
…よしっ!
「いいかお前らー!」
「おう!」
「ラストスパート、最後まで飛ばしていくぞー!」
「おう!」
「1,2,3、We are!!!」
気合を入れ直し、各メンバーは再びの登場に向け、スタンバイに入った。
「清田さん!!」
突然、舞台裏にプロデューサー・石川さんのあたしを呼ぶ声が響き渡った。
でも、あたしはギターを弾きながら唄っている最中で、目に入った汗を拭うことができなかった。
気付くと、あたしは汗まみれになっていた。
Tシャツの首周りに、汗で大きな染みができていた。
もし、これが体育の授業とかだったら、「あ〜あの人汗っかきだー」とか思われるけど、ここだとなぜか全然恥ずかしくない。
むしろ、「見ろ」みたいな。
そして、「お前らも一緒に汗を掻け」みたいな。
正直言って、あたしはここに来てくれている人たちのことを、知らない。
名前も、どこに住んでいるのかということも、知らない。
みんなが、それぞれに本来の職場やら学校やらを持っている。
顔と顔を合わせて話したことなど、ほとんどが無い人たちばかりだ。
社会的枠組みで言えば、私たちは他人同士。
でも、今ここではそうは思わない。
みんなが一つの音楽のもとに、一つになっている。
今だけ、私たちは他人同士じゃない。
他人じゃないから、私たちは楽しむことができるんだ。
ファーストシングルをリリースしてからわずか8ヶ月、このわずかな時間で武道館ライブを実現させたという事実が、TOMOMIの実力を物語っていた。
アップテンポな曲でも、バラードな曲でも高いクオリティを魅せ、人々の心を惹き付けるTOMOMIの音楽は、それまでの様々な経験が育んだもの。
智美は宮崎県の海岸沿いの街に生まれ、高校時代までをそこで過ごした。
部屋の窓を開ければ海の匂いが香るほど、家は海から近かった。
智美にとって、海とは音楽の母である。
「同じ波は二度と来ない」とよくサーファーが言うけれど、智美は誰に教わったワケでもなく、小学校低学年の時にはそれをすでに知っていた。
短い波でも大きな波でも、どんな波でも音程とテンポは微妙に異なっていることを智美は身をもって知っていたのだ。
そして、人を癒す力を持った波の音を幼少時代から何万回、何十万回、何百万回と聴いてきたことが、今の智美の音楽の柱となっている。
高校時代にギターを手に入れてから、智美は自然と曲を作り始めた。どんどんと音楽が好きになるにつれ、音楽性は幅を広げ、次第にシンガーソングライターになるという夢を持つようになった。
大学は迷うことなく海に近い大学を選んだ。海から離れて暮らすことは息苦しさを感じそうで、絶対にできなかった。
大学に入ると、当初、智美は軽音部への入部を考えた。
だが、そこで智美はとまどいを感じた。
誰もが、有名な歌手の曲のコピーをすることだけで活動をしていたのだ。
彼らの多くは本気で音楽をしようと考えているわけではなく、ただ、大学時代を音楽で楽しむことだけを考えているように、智美の目には映った。
真面目に音楽をしたいと考えていた智美は、彼らとの間にモチベーションのギャップを感じたのだ。
もちろん、自分で曲を作る者も若干いたが、それは到底音楽と呼べるシロモノではなく、智美は「ここでは自分は成長できない」と悟った。
軽音部への入部を諦めた智美は、次に吹奏楽部を選んだ。
正解だった。
吹奏楽が奏でる壮大なサウンドは、智美が持つ音楽性に大きな刺激を与え、それまで持っていた音楽性と混じり合うことで、大きな成長を遂げた。
ただ、いい曲が描けるようになったとしても、まだ智美には満足できないことがあった。
詩である。
自分で作った曲に載せた自分の詩は、自分が無理やり心からひねり出した詩に過ぎず、本当に伝えたいことを書いているとは思えなかったのである。
そんな詩の世界観を変えたのは、あの悲しい事故だった。
智美は悩みに悩みぬくことで、様々なことを知った。
本当の自分の姿、普段感じていた心の不安、愛と呼ばれるもの、苦しみ、強がり、前向きになることの大切さ、人間が本来持つ本当の心の叫び等、様々な新しい感情が、智美の詩の世界観を塗り替えたのだ。
そして今、その様々な経験の集大成と呼べるTOMOMIの武道館ライブは、肩書き的には終演の時を迎えようとしていた。
最後の曲が終わると、観客たちはスタンディングオーベーションを行い、TOMOMIが奏でた音楽に対して多大な評価を下したことをステージ上にいる人々に伝えた。
「ありがとー!本当にありがとーございました〜〜〜!!!ばいば〜〜〜〜い!!」
笑顔で大きく手を振りながら、TOMOMIは舞台裏へと駆け足で消えていった。
バックバンドのメンバーも引き揚げて、ステージ上には誰もいなくなると、それまで館内を色鮮やかに照らしていた無数の照明がゆっくりとライトダウンされ、再び館内は開演時と似たような暗闇に包まれた。
だが、これはあくまで次に起こることを予想しての演出だ。
パチパチパチパチパチパチ!
暗闇に包まれても、館内のスタンディングオーベーションは鳴り止まず、熱気を帯びた雰囲気は収まらない。
そして、次第に17000人の手拍子が一つのリズムを刻みだし、館内に大きな声で一つの言葉が繰り返し響きはじめた。
「…アンコール!アンコール!アンコール!!アンコール!!アンコール!!アンコール!!!」
始めから予期していた事とはいえ、舞台裏でTOMOMIは観客からのその声に感動し、鳥肌がたった。
あまりの嬉しさに思わず涙が溢れそうになったが、まだ泣くのは早いとグッとこらえた。
「…よしっ!みんなまた大集合!」
TOMOMIは再びバックバンドのメンバーを集め、ぐっしょりと濡れたTシャツのままお互いの肩に手を回し、円陣を組んだ。
「アンコール!!アンコール!!アンコール!!アンコール!!!」
観客の呼ぶ声が、どんどんと大きくなっていく。
…よしっ!
「いいかお前らー!」
「おう!」
「ラストスパート、最後まで飛ばしていくぞー!」
「おう!」
「1,2,3、We are!!!」
気合を入れ直し、各メンバーは再びの登場に向け、スタンバイに入った。
「清田さん!!」
突然、舞台裏にプロデューサー・石川さんのあたしを呼ぶ声が響き渡った。
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